安心して暮らせる社会を目指そう
安心して暮らせる社会を目指そう
今年も残すところ、あとわずか。どんな一年だったかと振り返ると、千年に一度といわれる超巨大地震による東日本の大震災がすぐに思い出される。東京電力の福島原子力発電所の放射能汚染問題は今なお解決しておらず、除染問題も含めて来年に持ち越される。また被災地の本格的な復興作業はこれから。国を含めた行政機関には被災者の立場に配慮した迅速な作業をお願いしたいものだ。
明るい見通しが立たない世界経済。米国の景気はまだ回復しておらず、職を失った人たちが抗議行動を起こす事態さえ起きている始末。一方、ヨーロッパでは財政危機に陥ったギリシャに端を発し、イタリアやスペインでも信用不安が広がり、財政再建が喫緊の課題に。欧州連合(EU)は圏内の経済安定化に向けて、各国の国債の利回り抑制に躍起となっている。これらの影響を受けて為替相場は「円高ドル安」基調となり、日本を直撃。いま我が国の輸出産業は大きな痛手をこうむっている。
自動車大手のトヨタは、来年3月期の連結営業利益は前期比で57%減の2000億円と大幅にダウンする見通し。これはタイ国の洪水被害の影響も加味されているが、12月9日に会見した同社の小沢哲副社長は「円高により日本のモノづくりの基盤の崩壊が始まった」とコメント。日本の実力が伴わない急激な円高に苦言を呈するとともに、日本の輸出産業が危機に瀕している、と警戒感をあらわにしている。
日本はデフレからの脱却が思うように進んでいない。物価は下げ止まらず、中小・零細企業の収益率は悪化。このため倒産に追い込まれる企業も多い。企業倒産は多くの失業者を生み、この結果、内需は拡大せず、まさに日本は“負のスパイラル”に陥っている。
このコラムでも何度か取り上げてきたが、政府は一日も早く景気を回復させて雇用環境を改善してもらいたいものだ。沖縄県から委託を受けた民間事業者(指定管理者)の雇用実態について、地元新聞社が調査したところ、約8割の人たちが非正規社員であることが分かった。調査対象者は575人。雇用の形態を見ると、半年~1年の契約社員が多いものの、パートやアルバイトが16%もあるなど、不安定な状況となっている。県からの委託料の問題もあるが、双方の努力で何とか改善できないものか、今後の取り組みに期待したい。
若い人たちにとって雇用が不安定だと、結婚もできず、子育てもままならないのが実情だろう。少子高齢化が加速している現状を踏まえると、国策として「子育て」を強力に支援していかなければ、数十年後の日本は活力が消え失せ、“斜陽国家”に成り下がるしかない。
社会不安をあおるようで申し訳ないが、厚生労働省は12月6日、生活保護を受けている受給者は8月末現在、205万9871人。また生活保護受給世帯数は149万3200世帯を突破し、過去最多を記録したと発表した。
このような厳しい経済環境の中、けなげに働く若い人たちもいる。だが、安心して働ける状況になっていないのは大変残念なことだ。これはほんの一例に過ぎないかもしれないが、大阪府茨木市役所内での出来事を取り上げたい。
ある臨時職員の女性(31歳)が産前の休暇を申請したところ、契約更新日に働けないことを理由に契約更新を断られ、職を失ったという。市当局は「契約満了によるもので、産休は関係ない」と釈明しているが、何か釈然としないのは筆者だけだろうか。
報道によると、産休の申請前、担当課では当人が「産休を取った後で(職場に)復帰したい」と申し入れたところ、「大丈夫だろう」と言われたという。縦割り行政の弊害がもろに出てきた格好だが、福祉行政を担う役所内の事例だけに、いただけない話である。
非正規社員という不安定な身分で子を産み、育てることを決断することは大変なことに違いない。それを杓子定規的に切って捨てるような行政措置はいかがなものか。善処方を強く求めたい。
国や地方自治体は福祉行政を推進する立場にある。母子の保護や子育て支援もそこには当然、含まれるはずだ。その立ち位置からすると、妊婦には特段の配慮がなされてしかるべきだと思う。
聞くところによると、タイ国ではバス等で妊婦が乗車すると、全員が立ち上がり、席を譲るという。貧しい国柄だが、心の豊かさを見る思いだ。日本も経済優先主義を軌道修正し、幸福を実感できる社会体制を構築する必要があるだろう。
★関連サイト
http://okuyami-ad.jp/newpage13.html
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